ウドンゲ「それでは、てゐの事宜しくお願いします!」 永琳「気をつけるのよ」 輝夜「早く帰って来なさいよー。じゃないとお夕飯先に食べちゃうわよー」 ウドンゲ「さて、メディは、っと…」 しかしそこには既にメディスンの姿はありませんでした。 ウドンゲ「もう居ない…しかしこの飛行機雲を追いかけていけばきっと…」 ウドンゲ「…しかし、このままでは到底追いつけそうに無い…久々にアレを使うか…」 きりきりきり… ウドンゲ「…良し、まあこんなものかな」 ウドンゲ「はァッ!!」 ヒュン、ヒュン、ヒュンヒュヒュヒュヒュバラバラバラバラバラバラ… ウドンゲ「この飛行方法ならイケル!」 ウドンゲ「ううっ…さすがに堪えるなあ…」 この時の飛行速度は通常の三倍をはるかに超えていた、と後に本人の口から語られています ウドンゲ「でももう少し…もう少しだけ持って…私の体ッ!」 ウドンゲ「捉えた!おーーーい!待ってーーー!」 メディスン「………」 ウドンゲ「駄目…聞こえてないのかしら?…こうなったらとことんついて行くしかない、か…」 同日 19:56:23 守矢の神社は嵐の前の静けさとでもいわんばかりの静寂に包まれていました。 そこに降り立つ影三つ。 神奈子「ぐびっ、ぐびっ…ふぅ…」 ドンドンドン 神奈子「…ついに来たか………」 ?「こんばんわぁ〜、ごめんくださぁ〜い」 神奈子「開いてるわよ、勝手に入って頂戴」 ?「あら、随分無用心な事で…まあいいわ」 紫「美人怪盗家族フォックスアイ、参上よ…うふふ…」 神奈子「そうか…お前達が…」 紫「随分と余裕ねえ。まるで全部お見通しって感じじゃないの」 神奈子「まあ、ある程度は…ね」 神奈子「それで、一体何の用かしらね?」 紫「愚問よねえ。泥棒の用事なんて決まってるじゃないの」 神奈子「言っておくけど、私は玉の在処は把握して無いわよ」 紫「あらそう、残念ね」 神奈子「そうそう、残念。残念賞は…おみくじなんてどう?」 橙「ところがギッチョン!我々の目的はそこじゃぁないんだにゃ、コレが!」 藍「ち、橙。お前分かってるのか?」 橙「ささ、藍しゃま!ビシッと説明してやってください!」 神奈子「ほう、ちょっと興味あるわね。その話」 藍「え、え!?私も詳しい話は…」 紫「いいわ、説明してあげる。まずはコレ…」 神奈子「あら、よく集めたわね」 神奈子「だが、これだけでは全然話にならないな」 藍「えっと、残り5個のうち2つは誰かの手に渡り、2つはスキマの萃香が持っていますね」 紫「そう…実質私たちが5個を抑えてている、と言う事になるわ」 神奈子「つまりはあと1個。そいつを抑えようという魂胆か」 紫「惜しい。65点」 橙「お、惜しいんですか?」 紫「大事なのはその先、どうしたら100点になると思う?」 橙「う〜ん、難しいですにゃ」 紫「橙、それじゃ、おさらいしてみましょうか。私たちの目的は何だったかしら?」 橙「それは…集めると何でも願いを叶えてくれるらしい玉を8個揃える事です!」 紫「ピンポーン。それじゃあ今の私たちに足りないものはなーんだ?」 橙「えっと、玉が三個ですにゃ!」 紫「はい、よく出来ました。そして、それこそが答え…私たちがここに来た理由よ」 神奈子「…私が残りの三個を持っているとでも言うのかえ?」 紫「いいえ…貴方が持っているのは一個…これは間違いないわ」 神奈子「断言するか…その根拠、聞かせてもらおうじゃないの」 紫「保険よ」 橙「ほけん?」 紫「玉の数を7個から8個に増やした理由は何だと思う?」 藍「縁起がいいからだとあの小さい方が…」 紫「それは貴方が盗み聞きしてきたまんまの話でしょう。」 藍「では一体…」 紫「もう!少しは考えなさいよ…いい?もし悪い輩が玉をそろえたらどうなると思う?」 橙「はいっ!悪い事に使いますっ!!」 紫「そう、それはとっても困る事よねえ」 紫「信仰を集める身としては悪用されるのは出来れば避けたい…そうよね」 神奈子「まあね、特にあなた達のような泥棒にはね」 紫「うふふ…となれば…橙。どうすれば避けられるか分かる?」 橙「ええっと、それは…玉を集めさせない事…ですか?」 紫「大正解〜♪橙は賢いわね」 藍「凄いじゃないか、橙!」 橙「あっ!と言う事は…わっかりましたぁ〜!!」 橙「集めさせない為には一個でもいいから自分が持っておけば良いという事ですね!」 藍「なるほど…して、橙?お前なら何処に隠す?」 橙「金庫か鍵のついた引き出しか…それか肌身離さず持っていますにゃ!」 紫「うーん惜しい!あと一歩」 藍「…そうか!その上で、集める数は7個と言う事にしておけば…」 紫「そう、その通り…自分の持っている8個目の安全は保障される…」 藍「そして都合の悪くない者が7個を集めた時、何食わぬ顔で8個目と共に現れれば…」 橙「…なんだかズルいですね」 紫「いいのよ、だって神様だもん」 紫「と、まあこんなところかしら」 神奈子「ぐびぐび…ふぃ〜…なるほどなるほど、ここまで来るだけの事はある、か」 橙「どうだ、参ったか!」 神奈子「しかし、それでもまだ2個足りないな」 橙「そうか!本当は残りの2個も隠し持っているんだにゃ!?」 紫「さあて、どうかしらねえ?」 藍「ま、まさか…ゴクリ…」 紫「なーんてね、それは多分無いわ。」 神奈子「あら?その方があなた達にとっては都合が良くない?」 紫「そうね。”だから”よ」 藍「では一体どうなさる御積りで…?」 ビュウウウウゥゥゥゥ……… 紫「…風が………吹いてきたわね…」 藍「はっ?」 神奈子「………」 紫「月があんなに綺麗…少し表を歩かない?」 神奈子「…うむ。酔い覚ましには丁度良い。」 紫「決まりね♪」 藍「うーん。本当、良い夜ですねえ」 神奈子「まったく、これでおかしな客さえ来なければ最高だったのにね」 紫「あら、お邪魔だったかしら」 神奈子「…それよりも、どうするつもりか聞かせてもらおうじゃないの。」 紫「なーに、簡単な事よ。二つだけ作ってくれればそれで良いのよ」 神奈子「あぁん?お前は一体何を言ってるんだ…作る?何を?」 紫「だから玉よ、たーま!」 神奈子「…正気か?」 紫「あら、私は至って大真面目よぉ♪」 藍「ゆ、紫様…それはいくらなんでも…」 紫「8個目を追加できたのなら9個目10個目も作れるんじゃないの?」 神奈子「………」 紫「ふふ…やっぱり♪出来るみたいね」 神奈子「何を馬鹿げた事を言い出すかと思えば…話にならないね」 藍「紫様…お言葉ですが、それでは集める手間が増えるだけなのではありませんか?」 紫「藍?だから私は二つと言ったはずよ」 藍「???」 藍「ですから、玉を二つじゃないんですか?」 紫「そうよ、玉は二個。」 藍「ではもう一つとは…?」 紫「もう一つは、集める数を据え置きと言う”新ルール”よ」 藍「またそんな無茶苦茶な…」 紫「あら?そんな事は無いわよ。これは大事な事よ。」 藍「まあ…確かに。仮に私たちが10個揃えても、こっそり11個目を作られてはかないませんからね」 藍「あ、でもそれなら玉を増やさなくても集める数を減らして貰えば…」 紫「それはきっと無理ね。だって神様自身にとって都合が悪いことしかないもん。」 橙「うにゃ…?あ、そうか!分っかりました!」 藍「お、何だ?橙。言ってみろ」 橙「集める数を1個減らして7個で良くしたら保険の意味が無くなるからです!」 紫「そうよ。あと極端な話、この3個で良いとしたら、二組が願いを叶えて貰える事になりかねないわ」 藍「なるほど…神様にメリットは全く無い、か…」 紫「その上、私たちは何処の誰が持ってるか分からない2個を探す必要が無くなるからね」 神奈子「…無茶苦茶だが、なかなか面白い事を考えるわね」 紫「いやん、もっと褒めて良いのよ」 神奈子「しかし、怪盗のやる事じゃあないわね」 紫「だって仕方ないじゃない!誰かさんがヘマしたおかげで…」 藍「しょぼーん…」 紫「まあ、そんなことはどうでも良いのよ」 藍「しくしく…」 紫「ささ、早い所済ませちゃいましょう♪」 神奈子「ぐぬ…そんな話本気で通ると思っているのか?」 紫「当然♪」 神奈子「嫌だと言ったら?」 紫「うふふ、はたしてそう言えるかしら?藍!」 藍「はい、こちらに…」 神奈子「うっ!!!す、すわ…」 紫「おっと、動いちゃ駄目よ」 神奈子「な、何でその子を…人質のつもりか!?」 紫「まあ、それもあるけど…二人で作ったんでしょう?必要だと思って連れて来てあげたのよ」 神奈子「なんと卑劣な…それでも人間か!」 紫「妖怪でーす!」 藍「あ、私は妖獣です」 橙「藍しゃまの式です!」 神奈子「くっ…諏訪子っ!」 紫「ほら、お友達が呼んでるわよ」 諏訪子「う、う〜ん…」 紫「ふふ…気がついた?」 諏訪子「あっ!ここは…」 紫「ほら、貴方も私達と一緒に彼女を説得してくれるわよね?」 諏訪子「説得…?そうか…私は人質なんだね…」 神奈子「(諏訪子…私の声が聞こえる?)」 諏訪子「(あっ!うん、聞こえる…ごめんよ。私のせいで…)」 神奈子「(いや、こうなってしまったからには仕方が無い)」 諏訪子「(こいつらの狙いはあの玉だよ!!)」 神奈子「(分かってる…)」 諏訪子「(なら戦って!こんな奴らに揃えさせちゃ駄目だよ!)」 神奈子「(分かってるッ、だがお前は…)」 諏訪子「(私の事はいいんだよ…それより早苗は?)」 神奈子「(案ずるな、既に幻想郷で一番安全な所に避難させてあるわ…)」 諏訪子「(そうかぁ…それなら私たちにもしもの事があっても安心だね)」 紫「さあて、相談は済んだかしら?」 諏訪子「フンだ!誰がお前達の言う事なんか聞くもんか!」 紫「まあ、また!この子は生意気ね!藍。アレは何処だったかしら?」 藍「はい、こちらに御座います」 神奈子「…あれは………」 紫「ふっふ〜ん♪コレが何だか分かるかしらん」 諏訪子「なっ…あ、アレは…まさかそんなッ!?」 紫「ふふ、どうしたの?お顔が真っ青よ」 神奈子「諏訪子?…あんなに怯えて…」 紫「どうやらコレの使い方が分かるようね」 諏訪子「う、ぐう…い、嫌だあ!やめろー!!」 神奈子「ま、まさか…空気を…?」 紫「ピンポーン!そしてパンパンに膨らんだところをこの針で…」 諏訪子「うわーーん!!聞きたくなーーい!!」」 紫「さあて、どうするの?」 諏訪子「ひっく…ぐすん…」 神奈子「ぐっ…私は…一体どうすれば…」 橙「紫しゃま!こっちは準備おっけです!」 紫「よろしい。それじゃしばらく練習しててね」 橙「プスー!」 神奈子「…っ!!!」 紫「さあさあ、とっとと決めちゃいなさいよ」 神奈子「…ました」 紫「はぁん?聞こえないわねぇ♪」 神奈子「わ、分かりました…」 紫「(堕ちたわね)」 諏訪子「ちょっ…なに馬鹿な事言ってるんだよ!」 神奈子「だけど…こうするしか…」 諏訪子「で、でも…それでも…」 神奈子「分かってる…だが、もう何も言うな…」 |